ただいま、アンジェロ。
声は聞こえたが私はいつものように力無くおかえりと言うだけだった。
ほらアンジェロ、お土産だ
父はそう言うとグァバジュースを机の上に置く。いつものことだ。
僕はグァバジュースが嫌いだった。
飯、作っておいたから。
一言だけ言葉を置き、僕はサッカーボールと一緒に路地に出た。
ここはリオから遠く離れた田舎町で、街灯も少なく犯罪も多いスラムだ。
麻薬の売人も多くいるが、喧嘩を売ったりしなければ問題ない。
僕はいつものように街の中で月明かりで少しだけ明るくなった壁に向かってサッカーボールを蹴った。僕は、父が嫌いだった。
父は元ブラジルユースで、金もあった。地位もあった。
だけどスポンサーから反感を買ったせいで選手生命は断たれ、母さんも離れて今は工場で働いている。
グァバジュースはその工場からくすねてきた商品だった。
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