top of page

ビーフ:キャプテンビーフ回顧録2 激闘!ビーフvsコロンビア人


今から20年ほど前の出来事である。

新人編集者として、編集部全体の雑用を一手に引き受けていた青年ビーフ。連日の会社への泊まり込みの際の楽しみが深夜の散歩である。夜も更け終電もなくなり、ひっそりとした道を歩く。これだけの事が至福の時間を生み出すのだ。勤め先である新宿から徒歩で新大久保へ。この新大久保の路地裏がビーフ青年のお気に入りスポットであった。


当時の夜中の新大久保は、立ちんぼといわれる国際交流を目的とした外国人女性で溢れかえっていた。「アソビー?」「オニーサン!」という魅惑の誘い文句がビーフ青年を惑わせる。しかし、ビーフ青年には問題があった。金がないのだ。国際交流における必要経費を支払う余裕がない。笑顔で女神たちに会釈をして通り過ぎ、会社に戻るのが日々の日課であった。


そんなある日、いつものように女神たちに愛想を振りまき通り過ぎる青年ビーフの前に天使が舞い降りた。屈託のない笑顔で声をかけてきたその女性。名前はマリア(仮名)としておこう。通り過ぎようとする青年ビーフの腕を掴むマリア。「ごめん、アソビじゃなくて散歩なんだ」そう言っても腕を離さない。あろう事か手を繋ぎ一緒に歩き出す。「サンポイッショニー」そう言ったマリアの顔を見る。整った顔立ち、それを際立たせる長身と細身の身体。まさに女神であった。しばらく一緒に歩く。「ごめん、戻らないと」そう言うとマリアは手を離し、笑顔で手を振る。歩き出す青年ビーフ。ふと後ろを振り返るとマリアはまだそこで手を振っていた。


会社に戻り、仕事の続きを始めるがどうにも集中できない。マリアに会いたい。マリアを抱きしめたい。気づくと青年ビーフは大久保通りに戻っていた。マリアと別れて1時間半が経過している。時刻は深夜の3時。立ちんぼたちの数も少なくなっている。「もういないか、、」そう思った時だった。自動販売機で飲み物を購入している一人の女性がいた。マリアだ!夢中で駆け寄ると少し驚いた様子のマリアは「キテクレタノ?」と笑顔を見せてくれた。「お金はないんだ。でも顔を見にきた」そう言うとマリアは笑顔で青年ビーフの手を取り歩き出す。たどり着いた先は古ぼけたラブホテル。「お金はないんだよ」そう言った青年ビーフの言葉を遮るようにマリアが言う。「イラナイヨー」そして二人は快楽の世界へ…


シャワーを浴びベッドへ向かう青年ビーフ。そこには下着姿のマリアが。獣のようなキスを交わす二人。そしてマリアの手が青年ビーフの股間へ伸びる。やがてマリアの唇も。寄せては返す快楽の波に飲み込まれぬよう反撃を試みる青年ビーフであった。マリアのパンティを脱がそうと手を伸ばすと、「ダメヨー」と手を叩かれた。照れてるのかな?諦めずに不意打ちでマリアのパンティを脱がそうとした時に、異物が手に当たった。硬い棒状の物が手に当たったのだ。これはなんだ?と考える間も無く、腹部に衝撃が。マリアのパンチが炸裂した。「ダメヨー!」先ほどとは違う、怒ったような口調と表情。声もなんだか低い。頭を回転させ行き着いた結論。「こいつ男じゃねえか!」一心不乱に股間を貪るマリアに対し怒りが湧き上がる。「おい、お前男だろ!」「チガウヨー!」あくまで否定するマリア。逃げ出そうとマリアの顔を引き離そうとすると再度腹部に衝撃が。2度も殴られた‼︎ 怒り沸騰の青年ビーフ。その間もマリアは股間を貪る。「噛みちぎられたらやばい。ここは耐えるんだ!」防衛本能が闘争本能を上回った青年ビーフの作戦、それは早々にイッてマリアを油断させるという物だった。


そして時はきた。青年ビーフが果てると同時にマリアの顔が離れる。すかさずマリアをぶん殴る青年ビーフ。さあ、やってやる!意地をかけた国際交流のスタートである。炸裂するマリアのパンチの連打。空振りする青年ビーフのパンチ。早くも戦意喪失した青年ビーフはひたすらマリアに謝った。そしてマリアは涙ぐむ青年ビーフに優しいキスを。「トイレイテクルヨー」そういってトイレに入ったマリアを置いて、ほぼ裸で一目散に逃げ出す。ホテルのエレベーターで服を着て猛ダッシュで会社に戻った青年ビーフ。夜が明け、朝日が登ってもその涙が止むことはなかった。


新大久保という地名を聞くたびに思い出す、我が素晴らしき人生のカケラ。

Comments


bottom of page